行書中国の法帖

李邕の代表作品「李思訓碑」を紹介/臨書につかえる拓本画像/李北海

行書

中国とう時代は、書道文化がとても発展した時代で、九成宮醴泉銘きゅうせいきゅうれいせんめいがつくられるなど、楷書が注目されました。

楷書はとう時代以降、かん時代に流行した隷書れいしょにかわって正式書体として使われるようになり、今日に及んでいます。

そのため六朝りくちょうずいとう時代の石碑にはふつう楷書が使われましたが、唐の第二代皇帝・太宗たいそうはこの習慣を破り、行書で碑文を書き、「温泉銘おんせんめい」「晋祠銘しんしめい」という行書碑の名作を残しました。

唐時代の碑では、王羲之の文字から集字して作った集王聖教序や復福寺断碑がありますが、ほかに優れたものは少なく、この数少ない行書碑のなかで、かなり重要な位置をしめるのが今回紹介する「李思訓碑りしくんひ」です。

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李思訓碑について

李思訓碑の全体
李思訓碑の全体

李思訓碑りしくんひは高さ340余㎝、幅147㎝、篆額12文字「唐故右武衛大将軍李府君碑」が冠され、碑文は30行、毎行70字で、約2000字で書かれています。

原石はいま陜西省蒲城県にありますが、下半分の文字の摩滅がひどく、32字くらいから下はほとんど読むことができなくなってしまっています。

李思訓碑の内容

李思訓碑りしくんひの内容は、とう王朝の皇族であり北宋画の祖と仰がれた李思訓りしくん(651~716)の徳を称えたものです。

李思訓碑の作者の李邕について

李思訓碑の作者である李邕りようについて紹介します。

李邕りようは、楷書が盛り上がるとう時代において行書の名手として第一に挙げられる人物です。

彼は文章の作成に長けており、書体は行草を得意としたので、当時、多くの立碑に関わりました。

その代表作品として、今回紹介している「李思訓碑」が有名です。

碑の主人公の李思訓について

碑文の主人公である李思訓について紹介します。

李思訓(651~716)は隴西成紀の人。あざな建見けんけん。唐の宗室、長平王李叔良りしゅくりょうの孫、孝斌の子です。

はじめ江都令となりますが、則天武后のとき宗室がおおく殺害されたので官を捨て去り、中宗が復位するに及んで、また宗正卿に抜擢されました。

晩年、開元中に戦功があり、武衛大将軍となりましたが、また山水画が得意で北宋画の祖と仰がれ、その子の昭道とともに大李・小李と呼ばれました。

開元4年、66歳で亡くなり、同8年(720)6月28日に睿宗の御陵、橋陵きょうりょうに陪葬されました。

碑文には李思訓りしくんめいにあたる李林甫りりんぽ(林甫は思訓の弟の思誨しくんの子)の官名を記して「吏部尚書兼中書令集賢學士」と書かれていますが、林甫がこの官についたのは開元27年(4月)でることから、この碑は本人が亡くなってから20年ほど経過したのちの開元27年以降に建てられたものと考えられます。
かりに27年とすると、李邕が62歳のときの作品ということになります。

李思訓碑の書風

李思訓碑の書風は、整った造形の中の明るさ、華麗さなど、王羲之の学習の成果をうかがうことができます。

王羲之より一層縦長で、右肩上がりの目立つ、力のこもったものです。

筆者の李邕りようの荒々しく力強い性格を思うと、いかにもその人にふさわしい気力があふれでるような書のように思われます。

さらに細部に注目してみると、李邕りようの行書には一点一画の起筆、送筆、終筆部分にメリハリがあり、中国の初唐しょとうごろに確立された楷書の筆遣いが存分に駆使されているのを確認することができます。

臨書に使える李思訓碑の画像

臨書に使える李思訓碑の画像です。

文字は1ページに3行、1行6文字に製本され、全部で61ページあります。

碑文の約半分の1070字が残っていますが、これは碑全体の上方より36字前後を遺していることになります。

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参考文献:『中田勇次郎著作集第3巻』、二玄社『書法ガイド39』、『書道全集第8巻』、『書道技法講座㊵』、『書の文化史 中』西林昭一

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