今の時代は、高等学校や大学を卒業しても正社員の仕事に就くことは難しく、アルバイトや派遣社員、契約社員の割合が増えています。
就活を勝ち抜くにはこれまで以上に自分の能力を高め、他者との差別化が必要なのです。
そこで、自分の能力を証明するものとして資格があります。
では、書道に関係する資格を取得すれば書道を仕事にできるのでしょうか?
高校「書道教員」
書道に関係する職業で最も代表的なのが、高等学校の「書道教員」ではないでしょうか。
しかし、大学で「書道科」を専攻して高等学校の書道教員を目指し、教員資格を取得したとしても書道教員の空席はほとんどありません。
高等学校の数が減っていますし、芸術科目の「書道」を選択させる高校も減っているからです。
もし、どうしても書道教員が諦められないのでしたら、国語科の免許も同時に取れる大学を選び、とりあえずは国語教員にもなれる保険を作っておきましょう。
書道教室:肩書があれば弟子が集まる?
書道の学習につきものといえば「競書雑誌」です。
書道教室やグループ長の所属する会派が発行する競書に参加して、そこで定める級や段を与えられます。
そして憧れの「師範」を取得することになります。
師範を取得すると自分で書道教室を開くことができ、書道で収入を得ることもできます。
書道教室が最高に盛り上がっていたのは昭和30年から40年代にかけてのようです。
この頃は「団塊の世代」がちょうど小学生、習字を習う年頃でした。
その地域で知られた家が習字教室を開くと、すぐにかなりの数の子供たちが集まったそうです。
しかし、今は少子化に加え、習字の人気は高くありません。
書道教室の経営だけで生活ができている教室の先生はかなり少ないのではないでしょうか。
「師範」が書道の指導者の肩書にならない時代なのです。
書道展の審査員をめざす
師範などの資格を認可する会には別な序列が存在します。
よく書家の肩書としてプロフィールに書かれている「〇〇書道会役員」などのことです。
これらは個別の書道団体が主催する書道展での成績に基づいて決められるもので、会員・同人・審査員などのランクがあります。
そしてその会を運営する中核の役員がいます。
これとはまた別に、会派が加入する超大規模書道展の会員・審査員などのランクもあります。
ここにも役員が存在して、日本の書壇のトップグループを形成しています。
書道により強い魅力を感じ、さらに努力する弟子(多くのお金を恵んでくれる弟子)に囲まれるには、会派やその上の超大規模書道展の審査員にならなければいけない、と考える人は多いでしょう。
そうでなければ、1つランクが上がるごとに年会費が倍近く上がることを我慢し続けることはできません。
かつて書道にもっと人気があった時代には、これらの肩書が上であればあるほど良い弟子が集まりましたが、現在書道人口は減少して、全体のスケールが縮小してしまっています。
そんな状況の中、枠が増え続ける審査員になれば必ずお弟子さんを持てるということは現実的ではなくなってしまっています。
実際私の知っている範囲ですが、弟子として師匠につきながら書道展に出品し続けてきたけど費やす時間と出費が多すぎる、おまけに自分のお弟子さんもつかないということで書道界から身を引いたという話は何人も聞いています。
こう考えると、書道業界の構成を見直すことや、書道をする人たちの目指すべきところなどの意識改革なども必要になってきますね。
まとめ
結論、書道を仕事にしてそれだけで生活していくのは難しいように思います。
戦後すぐのころ、後に有名になる方々の多くがデパートの看板書きなどで職を得ていましたが、これは夢のまた夢。
教書雑誌などでのランクアップがメインになり、手本写しで得る資格よりも、自分は何を目指しているのかを考えた方がよさそうです。
自分は自分らしく、自分の書道作品を確立しなければなりません。
そのためにはどのような学習をするべきか、先生とのかかわり方も考えたいです。