古今和歌集の由来
古今和歌集という名前の由来について説明していきます。
まず、「和歌集」という部分は理解できると思います。和歌を集めてそれをずらっと書き連ねたものをいいます。
「古今」とは何を意味しているのでしょうか。
「古」とは『万葉集』から後の時代を表しており、「今」とはこの古今和歌集を作った人たちが生きていた時代のことを指します。万葉集が作られたのは800年ごろと言われており、古今和歌集が作られたのは905年です。
つまり、『万葉集』以後の古歌と今の歌を集めた歌集のため、古今和歌集という名前になりました。
最初の勅撰和歌集
古今和歌集は醍醐天皇の命令によって作られた最初の勅撰和歌集です。
「勅撰」とは天皇・上皇が自身で、あるいは誰かに命じて、編集することをいいます。
つまり、勅撰和歌集とは天皇・上皇の命令によって作られた和歌集のことです。
天皇による命令を受けて和歌を選んだのは紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑の4人。
古今和歌集の成立
成立は延喜5年(905)です。これは平安時代前期にあたります。
なお、延喜13年(913)の歌合の際の歌が入っている点から、延喜5年は完成した年ではなく、醍醐天皇によって命令が下された年であるという説もあります。
また、現在伝わっている本による歌の数と実際の古今和歌集に入っている歌の数が異なることから、完成した後も歌の追加や改変が行われているとみられます。延喜13年の歌もその時に加えられたという説もあります。
古今和歌集の内容と構成
和歌約1100首を20巻に分けて収められています。
序文として、巻頭に紀貫之による仮名で書かれた「仮名序」、巻末には紀淑望による漢文で書かれた「真名序」が付されています。
古今和歌集において絶対におさえておきたいのが「仮名序」と「真名序」です!
特に仮名序はすぐれた歌論・文学論として後世の文学に影響を与えたということです。
仮名序について
「仮名序」では、和歌の本質や歴史が論じられ、『万葉集』の歌人である柿本人麻呂や山部赤人、また僧正遍昭をはじめととする六歌仙(「歌仙」とは優れた歌人という意味)について批評しています。
古今和歌集の成立事情も書かれており、歌集に対する選者たちの文学的意義の自覚と、後世まで読み継がれていくようにという抱負が示されています。
日本文学史上最初のすぐれた歌論・文学論とされ、後世に大きな影響を与えました。
歌風
古今和歌集に収められている和歌は約150年間の間に作られたものです。期間がとてもながいためつぎの3期に分けられています。
第1期-よみ人知らずの時代
「万葉集」に次ぐ時代から平安時代初期の嘉祥3年(850)年ごろまでを指します。「万葉集」から「古今和歌集」への過渡期な歌風で、素朴で率直、明るくておおらかな万葉調を色濃くとどめるが、王朝的な優雅さ・繊細さもうかがえます。修辞には序詞・枕詞が多用され、リズムは五七調が多いです。「よみ人知らず」と書かれた作者がわからない歌がほとんどで、古今和歌集全体の4割を占めています。
第2期-六歌仙の時代
嘉祥3年(850)から寛平2年(890)ごろまでを指します。前代の率直な読み方から、しだいに理知的・技巧的になり、豊かな情感が詠み込まれ、古今和歌集の歌風がほぼ確立します。修辞には縁語・掛詞が多用され、リズムは、七五調が多くなります。
代表歌人は、六歌仙と言われた僧正遍昭・在原業平・文屋康秀・喜撰法師・小野小町・大伴黒主です。ほかにも、在原行平・藤原敏行・大江千里などもいます。
第3期-選者の時代
寛平2年(890)ごろから古今和歌集成立までを指します。前代に比べて著しく理知的・観念的になり、古今和歌集の歌風が完成します。言葉の基地を尊い、技巧的で優美・繊細な歌が多いです。縁語や枕詞や、見立て・擬人法などの比喩が多く使われています。リズムは七五調で、産駒切れが多くみられます。
代表的な歌人には、紀貫之ら選者たちのほかに、素性法師・在原元方・伊勢などがいます。